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2011年05月01日

waiting

きっと、当たり前のように咲いた訳ではない。
この町の桜だけは。

そこは計画的避難地域。
あと30日だけ居住することを許された町。

季節は従順に花を咲かせ、
陽の光は徐々に高くなる。
全く自然とは別の理由で、その町からは人が去らなければならない。

瓦礫もなければ、津波でかぶった泥もない。
犬も猫も、酪農家が何十年にもわたって種を繋いで来た牛も、
それまで通り暮らしている。

でも、あとひと月しか人はそこに住んではいけない。
誰がひとの人生を蹂躙してもよいというんだろう。
誰がそんなことを望んだのだろう。

この校庭の桜はもうすぐ散り、そしてまた毎年花を咲かせるだろう。
ここに子供たちの声が聞こえるのをいつまでも待ちながら。
当たり前に咲くのではない。
この町の桜だけは。

posted by daisuke-m : 2011年05月01日 15:18