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2012年02月22日

original scape

2012.2.11 東松島 Higashi-Matsushima

ひとの家を覗き込むなんて、と思われるだろうか。

今日、南三陸町の写真館を営んでいる佐々木信一氏の「南三陸から」という
写真集を買った。
丸の内の丸善でサンプルブックを立ち読みしようと一枚目の写真を見た瞬間、
周りには申し訳ないと思ったけれど、思わず嗚咽が漏れた。
一枚目の写真は、津波が襲う以前の、緑が映える本当に美しい町の姿。

震災後ずっと、ズタズタになった町を歩き回りながら、
僕はこの濃い緑色を讃えた海の横に、あったであろう町の姿を想像して来た。
どれほど美しい町だっただろうと。
その答えが、突如として目の前に現れた。

想像していた以上だった。

だから、僕がいつも歩いてきた町は、本当に変わり果てた町なのだと
改めて思わされた。頬を殴られた感覚とでも言うのが正直なところだ。
11ヶ月経って、僕の思いはなおも甘かった。

この写真の部屋には優しい光が射していた。
若い家族が住んでいたのだろうと思う。
この窓越しに光を浴びながら、どんなことをしていただろう、
何を話していただろう。どんなに満ちていただろう。

めちゃくちゃになった部屋に射す、柔らかい光を頼りに、
震災前の空気をファインダーの中に巡らせていた。
そうして初めて、この震災の本当の姿が見えるのではないかと考えている。
どこまで、いつまで僕が耐えられるのかは、また別の問題ではあるのだが。

この写真からはフレームアウトさせたが、
すぐ横にこの部屋の家人と思われるアルバムが落ちていた。
椅子に腰掛け、くつろいだ女性の姿が見えた。
捜索隊が判りやすい場所に置いたものだろう。

それが11ヶ月経った光景なんだ。

posted by daisuke-m : 2012年02月22日 14:57