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2011年10月17日

the foundation

この日は仙台市の荒浜へ。
これは別に砂の山の上に家が建っていたのではない。
家の基礎から下が波に持って行かれたのだ。

こうして被災地域を行き来すると、波の高さ、被災範囲を確認する癖がつく。
そして、どこまで逃げれば助かったのか、段々とわかるようになる。
写真の場所からだと、どこへ逃げるにも極めて厳しかっただろうと思われる。

基礎だけが残る現場を見て、確かにこれが残るうちは次に進めないなどと
考えてしまいがちになる。
でも、南三陸の被災女性の話を聞いたときに、僕はそんな考えを恥じた。
彼女は言う、

「おかしな話かもしれないけどね、自分の家の基礎の上にいると、
本当に落ち着くのよ。不思議なものね。旦那と自分の家の基礎を
観に行ったときには、『お茶でも淹れる?』なんて冗談を言ったの」

工事業者がよかれと基礎を重機で壊そうとしたとき、
住民とトラブルになることもあるのだという。
「これ以上、勝手に俺の家を壊すな」ということなんだ。

写真からも分かる通り、ここに再びひとが住むことはないだろうと思う。
内陸側に集団移転をするか、他の地へ移るのかも知れない。
それでもここにはひとびとの生活があった。
そのことを忘れないような町づくりを期待せずにはいられない。

この場所から反対側を向くと、すでに穏やかさを取り戻した
海が見える。
夥しい瓦礫が残った砂浜は、かつてのような白さを取り戻そうとしている。
風が少しずつ、冷たくなっていた。


posted by daisuke-m : 2011年10月17日 14:04